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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1385号 判決 1950年3月31日

被告人

鈴木鈴男

主文

原判決中被告人に関する部分を破棄する。

被告人を懲役二年に処する。

訴訟費用中原審における分は被告人と原審共同被告人佐々木覚とその二分の一宛を当審における分は被告人の負担とする。

理由

弁護人林達也の控訴趣意第二点について。

およそ、代金の支払がないのにかかわらず、その意思があるかのように装うて、他人を欺罔して飮食物を提供させた場合、その飮食物を提供させた点につき、財物の騙取として刑法第二百四十六条第一項の罪が成立し、又その代金の支払を免れた点については不法利得として同条第二項の罪が成立するものであるが、同条第一項と第二項は本来同一罪質で又同一罪名をなすものであるから、同一の被害者を欺罔して、飮食物を提供せしめた場合は一個の詐欺罪が成立するので、この場合同条第一項の罪があるものとして法令の適用を示すも、もとより擬律に誤りがないのみならず、又何等経験則に反するものということもできない。そして原判決は被告人が単に遊興したというのでなく、原判示のように被告人が判示被害者を欺罔して酒一升五合、赤貝等代金五千四十円相当の提供を受けてこれを騙取したものであるというのであるから、これを刑法第二百四十六条第一項に問擬したのはまことに正当で原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。

(註、本件は量刑不当にて破棄自判)

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